姉さんが管を抜いてから、姉さんは喋らなくなった。
俺に医学知識はない。でも、姉さんが旅立とうとしているのは分かった。
後、2日。
「姉さん。」俺は姉さんにまだ、居て欲しくて、手をさする。そんな事、無意味なのは分かっている。
姉さんの手足にはもう感覚がない事も全部…
俺は、手をさすりながら泣いた。
姉さんの方を見ると、俺の方を向いていた。
「姉さん。」俺は言った。
姉さんは涙をスッと流すだけだった…
次の日、姉さんの呼吸は浅くなっていた。
目を開ける事は無くて、ただただ浅い呼吸だけが部屋の中に響いている。
藍は、そんな姿を見るのが辛いのか姉さんの部屋に近づかなかった。
でも、今日は珍しく藍は姉さんの部屋に入った。
耳を澄ますと聞こえるのは、泣き声だった。
多分、藍も分かっている。
「蓮お姉ちゃん。」藍のか細い声が姉さんの呼吸と一緒に響いている。
その日の夜。姉さんは、天国へ旅立った。
丁度、日付けが変わった時だった。
俺は、胸騒ぎに目を覚ました…
下に行くと、みんなが居た。
姉さんの部屋の扉を開ける。
その時、姉さんの呼吸は荒くなっていた。
「龍。お医者さんを呼んで!」と言う母さんの声で俺は電話で呼んだ。
先生が到着してから、10分後の事だった。
今日は、姉さんの誕生日だった…
俺は、姉さんの願いをしっかりと叶えられたのだろうか…
嘆いていると、背中に何かが被さった。
「龍…ありがと…」耳元で姉さんが言った様な気がした。
「姉さん…俺の方こそ、ありがと…」俺は星空を見上げ涙を流した…