次の日、体調が良くなり抗ガン剤の無い1週間がやって来た。私は、帽子を被り小児病棟に向かう。
「藍?」私は病室に入り藍を呼ぶ。
「お姉ちゃん!」藍は私に抱き着く。
「勉強する?」と私は聞いた。
「うん!教えて?」と藍が言う。
「わかった。じゃ、やろうか。」
私は藍の勉強を見ていた。
その頃、龍達は…
「父さん。母さん。お願い。検査を受けて。」と俺は頭を下げた。続いて聖や耕も頭を下げる。
「無理よ…私達の血でも、蓮を助ける事が出来ない。」と母さんは言った。
「なんで?だって家族でしょ?」と耕が言う。
「無理だ。理由は、まだ言えない。」父さんが言った。2人はそのまま藍の病室に向かって行った。
俺達には、出来ない理由が良く分からなかった。
耕の提案で、父さん達を尾行する事にした。
何か分かるかもしれない。
でも、俺らが知るのは衝撃な事実だった…
母さん達が来た。
「蓮。来なさい。」と言われ、私はついて行った。
「蓮。ごめん。」と父さんが言った。
「別に構わないですよ。今だけ、おじさん、おばさん呼びでも良いですか?」私は聞く。
「勿論よ。蓮。」とおばさんが言った。
今まで、私達が仲の悪い演技をしていたのはある理由があった。
それは、私の過去に理由がある。
その理由とは…
姉さんが、父さんや母さんをおじさん、おばさんって呼んでいた。
「龍兄さん。どう言う事?」と聖が言った。
「わかんない。」と俺は言う。
「もうちょい耳すましてみよ?ここカフェテリアだし、近づいてもバレないよ。」と耕が言った。
俺達は、姉さん達の少し離れた所に座った。
「本当にごめんなさい。私が・・・・で、本当の・・・・じゃ無いのに。」と姉さんの声が聞こえる。
「聞こえない。もうちょっと近寄るか…」と俺は言った。
俺達はちょっとだけ近付いた。
さっきより、聞こえる。
「何やってる?」と聞き耳をしていると、背後から声がした。父さんだ…
「ま、お前達も知る事になる。良いよな?蓮。」と父さんが言った。
「勿論。良いよ。全部話す。」と姉さんが言った。
私の本当の名前は、橋瀬 蓮。
私はの親は、立川夫婦の姉夫婦。昔から良くお世話になっていた。
「蓮?おばさん達来たよ〜」と言う母さんの声は今でも覚えている。
「おばさん!」私は良く言っていた。
「蓮ちゃん。久しぶり。」
「大きくなったね。」と言うおじさんやおばさん。
「早く、蓮ちゃんみたいな子が欲しいなぁ」とおばさんは良く言っていた。
そんな頃の事だった。
まだ、私は保育園の年中。おばさん達に第一子である龍が宿った時だ。
母さんが、私と父さんに果物を剥きにキッチンにいる頃だった。
ガタンッと大きく鈍い音がした…
何が起きたのか分からなかった…
母さんが血を吐いて倒れていた。
母さんはそのまま病院に運び込まれた。
母さんは、悪性リンパ腫だった…
ドナーを見つけるために、私は検査を受けた。
結果は…
私の血で母さんを救えるそう思った。
でも、母さんはそんな考えしてなかった。
「やりません。」の一点張りだった。
でも、今ならその気持ちが分かる気がした…
母さんは私の体から血を抜くのが嫌だった。
愛する子供の血で助かるなんて馬鹿げてるとでも思ったのだろうか…
母さんは、半年後に死んだ。
死ぬまで移植は「やらない」と言っていた…
母さんが死んでから、おじさん達に龍が誕生した。
そんな中、父さんは母さんが死んでから何も喋らなくなった。何も食べなくなった。私が話しかけても、反応すら示さなくなった。
「パパ?パパ!あそぼ!」と私が言うと、
「うるさい!」と言って2階に上がって行く。
そんな時いつも助けてくれたのは、おじさんやおばさんだった…
「ごめんね、蓮ちゃん。」
「大丈夫です。」
だが、すぐに私の日常は崩壊した…
父さんが死んだ…
交通事故だった、私はそのままおじさんやおばさんの家に引き取られた。
耕が出来た時、ある疑惑が浮上した…
私の母さんの事だった。
悪性リンパ腫は、遺伝で発症する可能性がある、とおばさんがどこからか聞いてきたのだ。
本来ならそんな事はあり得ない…だが、私の祖母も悪性リンパ腫で亡くなっていた。
藍が出来る頃、おじさんやおばさんと話し合った。
今、私は娘同然で育てて貰っている。もし、本当に私が悪性リンパ腫になり死ぬとしたら下の子達は悲しむだろう。今のうちに仲の悪いように演じていればこの子達はおじさんやおばさんの方に行く。それが私の提案した事だった。
「もう、バレちゃったのね。」とおばさんが言った。
「みたいですね。辞めますか、演技。」私は言った。
「じゃ、そうしよう。」また、仲のいい家族に戻ったのだった。
だが、私の体調はだんだんと悪くなって行く…
私の体調は良くなっているように感じた。
今日は、藍と私の一時退院日。
「藍。行こ?」私は藍に手を差し出す。
「うん!」と藍は言った。
今日は、家族で日帰り旅行。
「藍、どこ行きたい?」私は聞いた。
「う〜ん。遊園地!」と藍が言う。
「分かった。行くか。」と言う父さんの声で、遊園地に出かけた。
「蓮お姉ちゃん!あれに乗ろ!」遊園地に着いてからハイテンションの藍。
さっきから、色々とアトラクションに連れて行かれる。
今、藍が指を指したのはジェットコースター。
「母さん。大丈夫かな?」私は聞く。
「大丈夫でしょ?体調いいんでしょ?」と言うお母さんの声で私はジェットコースターに向かった。
ジェットコースターは、私の想像の遥か上だった。
「疲れた〜」と私は言った。
「お姉ちゃん、弱い。龍兄ちゃん行こ!」と藍は今度、龍を連れてさっきのジェットコースターに向かった。
「お疲れ。」と母さんが言った。
「疲れた〜なんでそんなに元気なの?」私は母さん達が座っているベンチに座った。
「はい。ほうじ茶でいいか?」と父さんが私にお茶をくれた。
「ありがと。」私は受け取って口をつける。
「あれ?龍兄さんは?」と耕が来た。
「藍に連れてかれた〜」と私は言った。
「マジか〜」と聖が言う。
「ま、疲れて帰ってくるよ。」と母さん。
事実、龍は疲れて帰って来た。その後、藍の犠牲になった2人は言うまでも無い。