新しく始まる1日。
無意識に働く日々。なんとなく始まりなんとなく終わる。弟達の学費を稼ぐ為に働いているだけで、今までの夢なんかとっくの昔に捨てた…

私は、親にすら捨てられた。
弟達の笑顔の為にこの立川家を支える。

そんな毎日でも私は普通に幸せだったのに…
毎朝、5時に起きて朝食を作る。
作り始めて5分すると、
「おはよ〜」と長男の龍が起きて来る。
「おはよ。」と私は挨拶をする。
「姉さん、手伝うよ〜」と龍はいつも朝食作りを手伝ってくれる。

出来上がる頃、起きて来るのが次男の聖だ。
「はよ〜いい匂い。」
「聖。おはよ。」と私は言いながら食卓に朝食を並べる。
「俺、耕を起こして来る。」と龍は二階に上がる。
耕は、三男。高校生だ。
ここには、社会人の私、大学4年と3年の龍と聖。
高校生の耕。それに、中学1年の藍が居る。
藍は病弱で、入院中。両親は藍につきっきり。
両親の働いたお金は、藍の病院費に消えるから、弟達の学費は私が出している。

「おはよ〜」と耕が起きて来た。
さて、4人揃っての朝食だ。
朝食を食べ終わり、片付けをする。
「行ってきま〜す。」と玄関から、耕の声がした。
耕が行くと、次に「行ってきます。」と聖の声がした。
洗い物が終わり、仕事に行く準備をしようとすると、龍がリビングでテレビを見ている事に気が付いた。
「龍。今日、大学は?」と私は聞く。
「今日?今日は午後から。午前中はバイト。」と龍は言った。
「そんなで、取れるの?」と私は聞く。
「大丈夫。」と龍は言った。
「そう。じゃ、私行くね。」と言って、私は家を出て職場に向かった。
龍は、バイトをして私が楽になるようにと、食費を少しだけ稼いできてくれる。
私は、そんな事しないで自分のやりたい事をしっかりとして欲しかった…
仕事が終わると私は、藍の居る病院に向かった。
“日護総合病院”
病院に入り、エレベーターに乗る。5階を押して、壁に寄り掛かり着くのを待つ。
エレベーターを降り、藍の病室に向かう。
ノックをすると、
「どうぞ〜」とまだ、幼さが残る藍の声がする。
「久しぶりだね。」私は入って言う。
「蓮お姉ちゃん!」と藍は嬉しそうに言う。
「お父さんとお母さんは?」と聞くと
「もうすぐ来るよ。」と藍は言った。
すると、丁度のタイミングで親が入って来る。
私の顔を見るなり、笑顔が消える。
「久しぶり。蓮。」と母さんが言った。
「久しぶり。父さん、母さん」と私も言う。
父さんの方に顔を向けると、私の方を睨んでいる。
私達3人の間には不穏な空気が流れていた…
「何しに来た。」と父さんが言った。
「藍の様子見に来ちゃダメ?」と私は言う。
「この前、来るなと言っただろ?」父さんが言う。
「確かに、父さんは言った。けど、藍は何も言ってなかったよね?」と私は言う。
2人は、俯いた。
藍は何が何だか分からないのかキョロキョロと私達の顔を見ている。
「いつも、私達の事気にしない人達より妹の方が大事。違う?」私はさらに追い討ちをかける。
そんな事言っても、彼らには逆上しかないと思っていたが…
「な、何言ってんの?いつ、私達があんた達のことを見てないって?」と母さんが言った。
所詮。私の親はこんなもんだ。
私は、藍に「また来るね。」と言って病院を出た。
家に帰ると5時過ぎ、聖が居た。
「ただいま。」と言うと、
「お帰り。」と聖が言った。
すると、
「ただいま〜」と龍が帰って来た。
「お帰り。」と私は言う。
「はい。買い物して来た。」と龍は私に買い物袋を渡して来た。
「ありがとう。」私は夕食を作る為にキッチンに向かう。
「ところで姉さん。どこ行って来たの?」と聖が言った。
「藍の所。」と私は言った。
「なんか、ごめん。」と聖が言う。
私と聖の間に静寂が訪れる。その空気を壊すかのように、
「ただいま!」と耕が帰って来た。