「諦めなよ麗衣。あたしたちはもう遅いんだよ」


そう言う佑里香の目はどこを見ているのかわからなかった。


焦点があっておらず、本心からその言葉を言っているのかどうかもわからない。


もしかしたら、ここへ来るまでにアプリに質問をしたのかもしれない。


そしてウサギはあたしを説得するように佑里香へ言っているのかもしれない。


そう思うと、少しだけ冷静になれる自分がいた。


あのアプリは消さないといけない。


持っていてはいけないものなのだ。


その時だった。


カチャッと小さな音がして、個室のドアが開いた。


中から青ざめた顔の美世が出てくる。


あたしが手を伸ばすと、美世は怯えた様子で身をすくめた。


「怒鳴ってごめん美世」


そう言い、美世からスマホを受け取る。


画面を確認してみると、お役立ちアプリはすでに消された後だった……。