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「返せ! あたしのスマホを返せ!!」


気が付けば、あたしはトイレの個室を殴りつけるように叩き、そう叫んでいた。


他の生徒たちが何事かと見に来ていたけれど、そんなことも気にならなかった。


目を見開き、唾をまき散らしながら個室内にいる美世へ怒鳴る。


「返せって言ってんだろ!!」


それでも出てこない美世に、今度はドアを蹴り付けた。


上履の汚れが白いドアにクッキリと刻まれる。


「返せよクソ女!!」


呼吸が乱れ、焦りと怒りと絶望が交互にあたしに襲い掛かる。


消される。


あたしの大切なアプリが消される。


「なんでそんなことしたの?」


のんびりとした声が聞こえてきて顔を向けると、そこに立っていたのは佑里香だった。


「沙月言ってたじゃん。洗脳だって。自分で無理矢理解けるようなもんじゃないでしょ?」


佑里香の手にはスマホが握られていて、画面上にはウサギがいた。


そのウサギを見た瞬間、ゴクリと生唾を飲み込んだ。