「ちょっと待って、あたしが洗脳されなかったのはどうして?」


そう言ったのは美世だった。


「あぁ。時々体質に合わない人がいるみたいだね? 催眠術と同じでかかりやすい人と、そうじゃない人がいる」


あたしは強いメマイを感じたときのことを思い出していた。


あの時、あたしの体はアプリを拒絶していたのかもしれない。


だけど、ほんの一瞬だったから、気にせずにアプリを使用し続けてしまった……。


「最初の頃、火事や事故に遭遇したのは?」


こうなると、もう全部が偶然じゃないような気がしてきていた。


「さぁ? さすがにそこまではわからないけど、あのアプリは普通のものじゃないよね。未来を見通してあたしたちに助言してくれたりするんだから」


沙月は肩をすくめてそう言った。


「でも、結果的に麗衣にとってはそれもプラスになったでしょ?」


沙月にそう言われてあたしは俯いた。


SNSに事故現場を投稿して一躍有名になったことは事実だった。


そして、日ごろから有名人に憧れていたことも、事実だった。


アプリはそれをくみ取って、あたしにチャンスを与えたのかもしれない。