「そうだね。その通りだよ」


「じゃあ、だれが?」


「信じられないかもしれないし、俺も信じられないんだけど」



一息ついて続ける。



「ずっと生死をさまよってた中で、君にメッセージを送ってた記憶があって。意識が戻った時、夢だったんだって思ったんだ。俺の願望からの」


「願望?」


「企業説明会で見た時からうちに入って欲しいって思ってたから」


「……え?」



立花さんがおもむろに起き出して、ベッドの横のサイドテーブルにあるメガネを手にする。



「俺、昔はメガネをかけてたんだけど」



そう話して、メガネをかける。



「え……?」



あたしはさっき病室の前のネームプレートでみた名前を思い出す。


──秀也


この名前にはたしかに見覚えがあった。



「秀(しゅう)……くん?」


「久しぶりだよね。美咲」



メガネをかえて笑う姿は当時となにも変わっていなかった。