「……せん、ぱい」
なんで、目の前にいるの。
「私の方が、先に走り出したのに……」
手を伸ばしてくれたのに、気づいていた。そして、その瞬間、私を追いかけて走り出してくれたのにも気づいていた。
だけど、途中からその足音も聞こえなくなって。醜い心を知られなくて済む安堵のため息と、寂しいなというこどもじみた涙が……喧嘩していたのに。
なんで、目の前にいるの……?
「遠回りして、走ってきた」
……あぁ、かっこいい。
「みーくん」
先輩という言葉が咄嗟にでたのは、荒い息と肩の上下。私をみつめるまっすぐな瞳が、私の知っている幼なじみの顔じゃなくて、男だったから。
先輩って、響きが似合っていた。