「先輩、だよ」
みーくんとは呼ばないの。そう早口で付け足す。
少し悲しそうに目を細め、それから彼は屈託なく笑った……つもりなのだろう。作り笑顔。貼りつけてる。
「もう子どもじゃないし、常識もあるからね。礼儀正しく!」
うなずきながら言うと、ストレートなミディアムヘアが、勢いにのってふわりと宙に舞った。
なんだか自分のなかでモヤモヤが広がって……耳を、かく。
ほんとは、みーくんって呼びたいのに、そんな気持ちに嘘をついて。
「莉音は、いつも明るいよな。だから、先輩後輩関係なく笑ってるし……いまさらな気もするけど」
先輩がそういうから、あわてて、顔の前で両手を振る。