「マスター。
ここを手放すんだって?」

「俺らこれから、何処で時間潰ししたらいいのよ?」

「夜も閉めるって聞いたよ。」

常連客たちのぼやきに、苦笑いで受け流し

ここは後輩たちが引き継いでくれるから

変わらず存続する事を伝えた。

俺と彰人が店に立つことはないが………

経営者としては残る。

会社の成功だけを考えて、前向きに進むが………

それでもお袋のしつこさを考えると

残しておいた方が安心だという結論に達した。

サラリーマンかぁ。

正直、不安だ。

仕事の内容よりも…………

成功しなければ、咲と彰人を不幸にしてしまいそうで………。

昨日、悠人と久しぶりに飲んだ。

家を継ぐ先輩として、聞いてみたい事が色々あったから。

唯ちゃんと結婚して、幼稚園を継いで…………

プレッシャーが半端ないだろうと思っていた。

なのに答えは…………

『全くないって言ったらウソですけど………。
楽しみな方が強いかなぁ。
俺が一人で継ぐわけでも、仕事するわけでもないから。
叔父も健在だし
唯ちゃんという最高のパートナーもいる。
先生達は、気心の知れた仲間達ばかり。
新しい事にみんなが取り組んでいけると思うと
楽しみで仕方ないかな?
俺の仕事は………
楽しそうなみんなの笑顔が続くように見守ることだし。』と。