たくさんの愛情をくれたのは

「結愛・・・俺お前に謝ってねえよ。起きろよ・・・」

「太一。」

名前を呼んで『太一へ』と書かれた手紙を・・・

「結愛・・・」「結愛ちゃん・・・」「結愛ちゃん・・・なんで・・・」

『颯太へ』『蓮君へ』『湊君へ』

泣いてるこいつらにも渡して

「結愛ちゃん・・・まだ陽翔のどんくさい話いっぱいあるんだぞ?聞かなくていいのか?」

「悠人。」

『悠人君へ』

これで最後の手紙。
「結愛の思いだ。ちゃんと読んでやってほしい」

泣くのを我慢してそう伝えた。

俺たちは結愛の家族に声をかけ帰ることにした。

帰りみんな無言だった。

大野達は涙が止まらない様子だった。

周りからみたらなにがあったってなるような光景だろうな・・・

「じゃぁな」

俺がそう言うと

「結愛は・・・結愛は笑ってた?」

大野に聞かれた。
多分昨日一日と今日の手術前のことだろうな。

「あぁ。私は生きるよって言ってた。」

それだけ伝え俺は家に帰った。

「ただいま」

それだけ言って部屋にこもった。

手紙を眺めていると

トントン

「陽翔?ごはんは?」

母さんか。

「いらねぇや」

そう言って俺は手紙を開いた。
『陽翔へ

この手紙読んでるってことは手術後だよね?

私は陽翔に出会うまで恋を諦めてた。

だって20歳までの命だって言われたら諦めちゃうよね。

助かるには移植だって。

でも正直したくない。

それって他人の心臓でしょ?

きっと生きたくて仕方ない人の心臓を私がもらうんだよね?

その人は眠ったままだけかもしれないのに。

私のせいでその人亡くなってしまうって思うと怖い。
だから移植は乗り気にはなれなかった。

20歳まで思いっきり友達と楽しもうって。

そう思ってた。

でも陽翔に出会って好きになって私ね将来を想像しちゃったんだ。

その時どうしても生きたくなった。

でも気持ちとは裏腹に心臓は悪くなって行った。

でもドナーも見つかった。

陽翔に付き合ってって言われて嬉しかった。

大好きな人からの告白。

こんなわたしでいいの?って思ったよ?
でも陽翔は付き合うようになってまだ間もないのに愛情をたくさんくれた。

ちゃんと届いてるよ。

私も大好き。

愛してる。

私はこの先陽翔しか愛せない。

だからこそお別れしよ。

陽翔には私以上にいいひとがいるよ。

幸せになって?

私目を覚まさないかもしれない。

いい人見つけて・・・

愛してるよ。陽翔。ばいばい』
結愛はこの手紙を書きながら泣いたんだろうな。

後半文字が濡れて歪んでた。

「結愛・・・お別れ・・・できそうにねぇや」

俺はお前の彼氏だ。

一方的な別れなんて承諾できっこねぇよ。

「安心しろよ。俺もお前しか愛せねぇよ・・・」

俺はそっと呟いた。

結愛が眠ってから1年が経った。

高校3年の冬。

「陽翔!受験票もった?」

「母さん、シャツどこ?」

「もうかかってるでしょ?」

「うわ、やっべ、行ってくる」

今日は受験の日有名大学の医学部。

4年で確実に卒業できる有名な大学だ。

普段遅刻しないのになんでこんなに慌ててるかっていうと
「兄貴、結愛さんからの手紙ここ置きっぱだよ」

「陽太、もってこい!」

今日の朝結愛から届いた手紙を読んでいた。正確には結衣さんから。

結愛はやっぱりいい女だ。

受験日に手紙を渡してほしいと結衣さんに頼んでたらしい。

それと・・・

「お守りもったの?」

「母さんからもらったのと結愛からのちゃんと持ってる。いってきます」

「陽翔!」

「どーした?」

「がんばってきなさい」