放課後、ベアトリスが教室から去っていくのをコールは鋭い目つきで見ていた。

 ヴィンセントも同じように目で追っているのがわかると、コールはヴィンセントに近寄った。

「そんなに好きなのに、なぜ側に寄って声をかけてやらないんだ。どうしてベアトリスと距離を取るんだ」

 ヴィンセントは無視をして去ろうとする。

 コールはヴィンセントの腕を咄嗟に掴んでしまった。

 その力は通常の強さではなかった。

「ポール、前から不思議だったんだが、いつそんな強い力を得たんだ。以前と比べたら全くの別人のようだ」

「そりゃ、これだけ痩せればそうも見えるだろう。ダイエットに成功した、それだけのことさ」

「いや、見かけの話をしてるんじゃない。中身の話だ。お前を見ていると、ある人物を思い出すんだ」

 コールは少し動揺する。

 ばれては元も子もない。

 ポーカーフェイスを装い平常心を必死に保った。

「それは俺の知ったこっちゃない。勝手にその人物を思い出してくれ。それより、ベアトリスのことが聞きたい。あの子は何か問題をかかえてるんじゃないのか」

 ヴィンセントの顔色が変わった。

「どういうことだ?」

「いつも一人だし、友達もいないし、結構かわいいのに男も近寄らない。何かなければ、あそこまで孤独になることないだろう。それなのに好意を寄せるお前も絶対に近づかないのはなぜだ? も しかして近づけない理由でもあるのか?」

 コールの目がヴィンセントの態度を見逃さないようにするどく光った。

「なんでそんなことを聞くんだ」

「いや、ちょっと気になっただけ。あっ、そう言えばベアトリスから面白い話を聞いた」

「何を聞いたんだ」

「以前、恐ろしい形相の暴漢にあって襲われたところをヴィンセントが助けてくれたとかなんとか」

 コールはカマをかける。

 ヴィンセントは思い当たる節を見せて言葉に詰まってしまい、コールはそれを見逃さなかった。

 そしてひっかかったとばかりに嫌味な笑いを顔に浮かべた。

「おや、心当たりがあるのかい? 彼女の夢の話だったんだけど」

「何が言いたい」

「まあどうでもいいけどね。さてと、帰るかな。プロムの準備でタキシード用意しないといけなくなったし、お前はプロムの 相手見つかったのか?」

「ああ」

「相手はベアトリスじゃなさそうだな」

 コールは嘲笑いながら、バイバイと手を振って教室を出て行った。

 ヴィンセントはコールとの会話に引っかかりながらも、ダークライトや影の存在が見えないせいでまだ何も気がついていなかった。

 コールはベアトリスの後をつけようと、辺りを探し出した。