「ちょっと、ポール、また意地悪してるんでしょ」

「またお前か、しつこいんだよ。俺になんで付きまとうんだ。放っておいてくれ」

「誰かがあんたを監視してないと、すぐに暴走するでしょ」

「だからなんでそれがお前なんだよ」

 二人が言い合いをしだしたので、ベアトリスはそっと立って、その場を離れた。

「おい、ベアトリス、待てよ。話は終わってない」

「あんた、もしかしてベアトリスを口説いてたわけ?あんな女のどこがいいのよ」

「はっ? お前何言ってんだよ。もしかして妬いてるのか」

「そ、そんなことあるわけないでしょ。あんたみたいなデブのオタ…… クなんか……」

 アンバーは言いかけたが、目の前に映るポールの姿はもう馬鹿にされるような風貌ではなかった。思わず言葉に詰まった。

「そっか、この俺の姿もまんざらじゃなくなったって訳だ。俺はガキは相手にしないんだが、鼻っぷしの強い女はそんなに嫌いじゃない。お前が望むなら相手になってやってもいいぜ」

 コールは立ち上がり、アンバーをニヤリといやらしく見つめた。

「それって、プロムのパートナーってことね。判ったわ。受けてあげる」

「えっ? プロム?」

「有難く思ってよね。普通あんたみたいなのが私をプロムデートに誘えるなんてありえないことなんだから。断るのかわいそうだから受けてあげるんだから」

 話の主導権を握られてコールが拍子抜けしている側で、アンバーは意地を張りながら顔はにやけて笑っていた。

「ほら、次のクラスに遅れるわよ」

 アンバーはコールの腕を引っ張って歩き出した。

 ──勘違いも甚だしい女だぜ。まあいっか。プロムで暴れるのも悪くないかもしれない。それにしても、ベアトリスの言った言葉が気になる。あいつ、もしかして……

 コールは何かがつかめそうだと急に心踊った。