ホームルームが終わり、急いで立ち上がった私の手首を晒名がぱしっと掴んだ。

「そんなに急いでどこに行くのかな?あおちゃん。」

子供の頃の呼び名の゙あおちゃん"、そう呼ばれ懐かしいようなくすぐったさで、一瞬私の立ち上がりかけた勢いが止まった。

「ん?葵って呼ぶよりあおちゃんのほうがいい?」

私の手首を掴んだまま、立ち上がった晒名は、私の視線に合わせるように少しかがんで顔をのぞきこんできた。

近い!!

イケメンのドアップは心臓に悪い。
好きでもないのにムダに心臓がドキドキいって、勝手に頬が熱くなる。

「どっちもやめて!
河野にして!」

「んー、それは聞けない。
葵は俺のだから。
…葵、ほんとにあまい香りがする…」

掴んだ手首を自分のほうに引き寄せると、ふわりと優しく抱き締めて私の髪に頭を埋める。

突然の出来事に私は固まった。

なっなに!?

なにがおきてるの?

私、抱き締められてるの!?

晒名から柑橘系の爽やかな香りが私の鼻をくすぐる。

晒名の体温に、私の顔に集まった熱に、頭がクラクラした。