佐藤望花【さとう もか】(15)♀
高校一年生。
高校生活はいたって順調。成績も普通の上。バイトは今回のカフェが初。志望動機は素敵なカフェだったから働いてみたかった。隼人のことが好き
田中隼人【たなか はやと】(21)♂️
一樹と一緒にカフェを経営した。
高校卒業後はずっと飲食店でバイトをしていた。
目付きが悪いが面倒見は良い。
吉沢一樹【よしざわ いつき】(21)♂️
カフェ『Wunsc【ヴンシュ】』の店長兼経営者。
幼い頃に両親を亡くし、親戚を転々とするなか妹たちのことを思う頼りになるお兄ちゃん。
夏目光【なつめ ひかる】(15)♂️
望花と同じ高校。昔一樹に助けられてから一樹に懐く。
高校生になる前からお店を手伝っていた。美桜のことが好き。
吉沢美桜【よしざわ みお】(18)♀
大学生で特待生。お店の店員として働きながら、成績はいつも上位。美人で頭も良いが彼氏はいない。(告白されても断っている。)
吉沢里桜【よしざわ りお】(14)♀
中学生だが家の手伝いのようにカフェを手伝っている。
成績もそこそこだが、来年の進路に悩んでいる。光のことが好き。
桜が散りゆく中
その場所は見つけた。
ピンクの花びらが降り積もる中
可愛らしく建つその建物を見つめた。
白を基調とした外壁に緑色の屋根。薄黄色の看板に画かれていた文字。
『Wunsch』
何て読むんだろう。。
ドアには『close』の看板。
ふと横を見ると張り紙が貼ってある。
『求人募集』
いそいそとその番号と担当者の名前を携帯にメモる。
家に帰ると即電話をかけた。
「お忙しいところすみません。私求人募集の張り紙をみたのですがー」
「すーはーすーはー」
街中で何度も深呼吸をする女子高校生を見たことあるだろうか。
“怪しい“
そう思われても仕方のない光景だ。
道行く人に何度もチラチラ見られながら、最後に大きく深呼吸をして気合いを入れた。
「よし、頑張るぞ!」
桜が大分散った4月の半ば、可愛らしいお店の前に一人の女子高校生が立っている。
『佐藤望花【さとう もか】』
親がカフェ好き、コーヒー好きと言うことで名付けられた名前だ。正直中学の時は男子にからかわれて良い名前じゃないーとも思った。しかし、高校に上がり「可愛い名前だね~」とすぐに皆に覚えられ友達も出来た。中学と高校でこうも違うのか。。16にしてしみじみ思った。
今日は初バイトの面接の日。
約束の時間の20分前には到着していたが、あまりに早すぎたので10分程呼吸を整えていた。
いざ!!
ドアに手をかけようとした時ー
キキーキッ
突然のバイクが止まる音がしたと思ったら、お店の前に一台のバイクが止まった。
お客さん・・・?
いやにしても早いな。店員さんかな?
心で思い、バイクから降りる人を目で追った。
身長は180ぐらいの長身の男性だ。
カフェの制服は似合いそうだが・・・!?
顔を見て唖然とした。目付きが悪いっ!!
「・・・」
あまりに見すぎたのか目が合ってしまった。
「あ。あの私今日面接に来ましたー」
「邪魔」
「え・・・」
とりあえず挨拶をしようとしたが、興味なさそうにスルーをし、男性はドアノブに手をかけた。
「!?」
男性が横切った時何かの良い香りがした。
「この香りー・・・コーヒー?」
コーヒーの香りが漂う男性はそのまま店内へと消えていった。
「・・・な、なにあれ感じ悪っ!」
我にかえって声に出すと、再び深呼吸をして店内へと入っていった。
扉を開けるとそこは夢の様な落ち着きある空間でしたー。
木をふんだんに使ったテーブルに椅子。
奥には座敷。
落ち着きある蛍光灯に、各テーブルごとに置かれているランプ。
観葉植物も置いてあり、なによりー
「あ、いらっしゃいませー!」
可愛い制服ーって違うー!!可愛らしい店員さんたち!
あれ?私より小さそうな・・・中学生?
「すみません、当店まだ営業時間外でして。」
「あ、違うんです。私面接に来たー」
「あー面接の子!お兄ちゃん~お兄ちゃんー面接の子来たよー!」
突然納得したように奥へ叫んだ女の子。
すると奥から店長らしき人が来た。
「聞こえてるよ里桜。それにここではマスターって呼んでくれって何回も言ってるだろ?」
飽きれ気味に女の子に向かって話している。物腰柔らかそうな優しそうな店長さんだ。
「初めまして。ここのマスターをしています、吉沢一樹【よしざわいつき】と申します。」
「あ、佐藤望花です。よろしくお願いします。」
「さ、こちらの席へどうぞ。」
案内されたのはすぐ近くにあった席だった。
緊張気味に腰を下ろしたとき、聞き覚えのある声が奥から聞こえた。
「一樹、本日のコーヒーはどれにするーあ。」
「あ。」
それは紛れもなくあのコーヒー男性だった。
「コーヒーの。。」
「あ?コーヒー?」
「あれ、なんだ望花ちゃんは隼人と知り合い?」
「え、いや知り合いってわけでは。。」
先ほどのお店の前での出来事を説明した。
「あーなるほど。確かに隼人がやりそうなことだね。ごめんね、望花ちゃん。隼人、面接の子だと分かったならちゃんとお店に招き入れてよ。」
「面接っていうから店内に入るときから見られてるのかと思ってスルーした。面倒だし。」
「声が駄々漏れてるよ。。まぁ、とにかく。人手も欲しいし、望花ちゃん仕事も早そうだし可愛いし採用!ーって言いたいところだけど、ここはカフェの面接としてカフェらしい面接をしようと思う。これに合格しなかったら残念だけど不採用で。OKかな?」
「は、はい。(カフェらしいこと?)」
「里桜、例のケーキ持ってきて。」
「はーい、マスター。」
「はいそれじゃあ望花ちゃん。このケーキに合うコーヒーを選んで下さい。」
「え。。」
差し出されたものはショートケーキだった。
このケーキに合うコーヒーを言えば良いのかな?
「これはけっこう難しいと思うから、どうゆう風味のものとかで大丈夫だよー。」
「まぁ、素人には難しいと思うし、ここで働くのを諦めて貰っても良いけどな。」
「こら隼人、せっかく面接に来てくれたのに。。」
確かこのショートケーキには。。
「酸味のあるコーヒーが合うと思います。豆の煎り方は中煎りで。キリマンジャロやブルーマウンテンなどが有名ですが、私はハワイ島のコナが好きです。ちなみにコーヒーが苦手で紅茶を好む人ならニルギリもしくはアッサムなどが合うと思います。ミルクティーも合うのでアッサムやウパで作るミルクティーもおすすめだと思います。」
・・・・・
や、やっちゃったー・・・めっちゃ皆さん引いてる?
「あ、あのー」
「ーい」
「え」
「すごいね、望花ちゃん!」
感動気味に食いついてきたのは先ほどケーキを運んでくれた女の子だ。
「うん。本当にすごいね!これならもう即採用だよー!」
店長の吉沢さんもびっくりした表情を浮かべた。
「お前、何かやってたのか?」
「両親がカフェ巡りが好きで良く連れていってもらってまして。その影響で私も趣味がカフェ巡りで。。」
「ふーん。」
興味あるのかないのか分からないような表情をした先ほどのコーヒーの男性。でも少しだけ驚いた表情を浮かべてた。
「お、珍しく誉めてるね~隼人。」
「誉めてはねぇよ。カフェの店員やりたがるんだからこれくらい当然だ。」
「まぁ、とにかくこれで採用だよね!お兄ちゃん!」
「そうだね!ーってオーナーだろ、里桜。・・・改めて、ようこそ『Wunsch』へ!!これからよろしくね、望花ちゃん!」
「はいっ!こちらこそよろしくお願いします!」
こうして私の初バイトが始まった。