放課後、図書委員の私は本の整理当番をしていた。
一ヶ月に一回くらいこの当番は回って来て、デタラメな場所に置いてある本を元に戻す作業だ。
めんどくさいと思う図書委員もいるけど私は結構好きだ。普段読まない本に出会うことがあるから。
ふと、観光雑誌のコーナーに目が止まった愛媛の観光雑誌もある。記憶は曖昧だけどどんなところだったっけ。
雑誌を手に取ってページを開くと、道後温泉や松山城などの有名観光スポットの写真がどどーんと目に飛び込んでくる。
私が住んでいたところは確か観光スポットのように賑わってなくて、素朴な雰囲気がするところだったはずなんだけど。
ちょっと違ったな、少しがっかりして私は本を閉じた。
そこへガラリと誰か入って来た。私は雑誌を持ったまま慌てて受付の方へ出て、
「あ、今貸し出しやってなくて!」
とその人の顔を見た。
「あ、泉くん…」
驚いた。泉くんがいる。
「なんだ。借りたい本あったけど残念」
「あ、うん。ごめんね、今日は本を整理する日なんだ」
「そっか。大変だね、図書委員は」
そうでもないよ……?としどろもどろに私が応えると、泉くんが私が手に持った雑誌に目をやった。
「それ」
「あ、これ?たまたまちょっと」
「愛媛観光?」
「んーん。気になっただけ」
「ちょっとそれ見せて貰ってもいい?」
「え? ど、どうぞ」
雑誌を渡すと泉くんは真剣な表現でページをペラペラと捲って、「懐かしいな」と呟いた。
「え?」
「俺、小さい頃住んでたんだよね」
「え、嘘?!」
やっぱり私の懐かしさに対する直感は間違ってなかったんだ!
「こういう観光スポットの近くじゃないけどね。けど、父さんに連れて行って貰った記憶あるよ」
「そ、そうなんだ…」
実は私も昔住んでいてーーと言おうとしたけど。サッと泉くんが雑誌を閉じて、
「はいこれ、ありがとう」
と渡された。
「あ、いえ」
「邪魔したね。じゃあね」
泉くんが帰って行く。ダメだ引き止めないと言ってしまう!言わなくちゃ、待って、待って……。
「待って!」
いつの間にか声に出していた。泉くんは、ん?と振り向いた。
「あ、あのね。私も五歳まで住んでたんだよ。愛媛に!」
言えた。やっと言えたーー!
と心の中でがっつポーズした。でも次の瞬間、だからどうしたと思われたんじゃないかと不安になった。
案の定、泉くんはきょとんとした顔をして返事に困ってるように見えた。ああ、そうだよね……。
愛媛と言っても広いし、同じ時期に住んでたとは限らないし、こんな事言われても困るよね、余計なこと言わなきゃ良かったな。
がっくりと肩を下ろした。
するとその肩に手が触れられた。見上げると泉くんがにこっと笑って私に言った。
「知ってる」
一ヶ月に一回くらいこの当番は回って来て、デタラメな場所に置いてある本を元に戻す作業だ。
めんどくさいと思う図書委員もいるけど私は結構好きだ。普段読まない本に出会うことがあるから。
ふと、観光雑誌のコーナーに目が止まった愛媛の観光雑誌もある。記憶は曖昧だけどどんなところだったっけ。
雑誌を手に取ってページを開くと、道後温泉や松山城などの有名観光スポットの写真がどどーんと目に飛び込んでくる。
私が住んでいたところは確か観光スポットのように賑わってなくて、素朴な雰囲気がするところだったはずなんだけど。
ちょっと違ったな、少しがっかりして私は本を閉じた。
そこへガラリと誰か入って来た。私は雑誌を持ったまま慌てて受付の方へ出て、
「あ、今貸し出しやってなくて!」
とその人の顔を見た。
「あ、泉くん…」
驚いた。泉くんがいる。
「なんだ。借りたい本あったけど残念」
「あ、うん。ごめんね、今日は本を整理する日なんだ」
「そっか。大変だね、図書委員は」
そうでもないよ……?としどろもどろに私が応えると、泉くんが私が手に持った雑誌に目をやった。
「それ」
「あ、これ?たまたまちょっと」
「愛媛観光?」
「んーん。気になっただけ」
「ちょっとそれ見せて貰ってもいい?」
「え? ど、どうぞ」
雑誌を渡すと泉くんは真剣な表現でページをペラペラと捲って、「懐かしいな」と呟いた。
「え?」
「俺、小さい頃住んでたんだよね」
「え、嘘?!」
やっぱり私の懐かしさに対する直感は間違ってなかったんだ!
「こういう観光スポットの近くじゃないけどね。けど、父さんに連れて行って貰った記憶あるよ」
「そ、そうなんだ…」
実は私も昔住んでいてーーと言おうとしたけど。サッと泉くんが雑誌を閉じて、
「はいこれ、ありがとう」
と渡された。
「あ、いえ」
「邪魔したね。じゃあね」
泉くんが帰って行く。ダメだ引き止めないと言ってしまう!言わなくちゃ、待って、待って……。
「待って!」
いつの間にか声に出していた。泉くんは、ん?と振り向いた。
「あ、あのね。私も五歳まで住んでたんだよ。愛媛に!」
言えた。やっと言えたーー!
と心の中でがっつポーズした。でも次の瞬間、だからどうしたと思われたんじゃないかと不安になった。
案の定、泉くんはきょとんとした顔をして返事に困ってるように見えた。ああ、そうだよね……。
愛媛と言っても広いし、同じ時期に住んでたとは限らないし、こんな事言われても困るよね、余計なこと言わなきゃ良かったな。
がっくりと肩を下ろした。
するとその肩に手が触れられた。見上げると泉くんがにこっと笑って私に言った。
「知ってる」