わたしは深く俯いたまま、ぽつりぽつりと知世ちゃんと寺本達を見ていたことを2人に話した。



「なるほどー……」



話を聞き終えた後、奈緒は数度頷きながら腕を組んだ。美咲も納得したように頷いている。



「確かに、ちょっとおかしいよね。振った相手の髪を撫でるなんて」



眉をひそめて、美咲は言った。



「沙織、不安になっちゃったんだね……」



不安になったとは一言も言っていないのに、わたしの心の中には不安があった、ということを奈緒も美咲も分かってくれている。


寺本に不信感や嫌悪感を抱いた訳じゃない。ただ、自分のことや寺本、桜花ちゃんのことが分からなかった。みんながどんな気持ちなのかが分からなくて、そこがたまらなく不安だった。



「うん……。知世ちゃんにも悪いことをしちゃった……」



話すと少し楽になったからなのか、わたしはちょっとだけ顔を上げた。



「多分、あんなことをしただけで堤さんは怒らないと思う。一言謝れば、きっと大丈夫」



美咲は、わたしの肩に触れながら言った。



「ありがとう……」



美咲の友達思いなところに、わたしはどれだけ救われたのかな。