見てみると、中学生くらいの赤いリボンをつけた、ポニーテールの女の子の後ろ姿が見えた。
あの子はきっと、寺本の長妹である風音ちゃんだ。
小さい子達も見える。寺本の弟や妹だ。
ソファには、桜花ちゃんが俯きながら座っている。寺本はかがんで、彼女に何か言葉をかけているようだった。
寺本が口を閉じた後に、桜花ちゃんの髪をそっと撫でたのが見えた。
「っ……!」
わたしは息を呑んだ。
「沙織ちゃん?」
わたしの様子を見て、瞬きを繰り返しながら知世ちゃんがそっと声をかけてくれた。
けれど、わたしは今の自分をコントロールできない。
「嘘……! な、何あれは……!」
知らないうちに、身体が寺本の家から遠ざかっていた。
「沙織ちゃん、大丈夫?」
「知世ちゃん、ごめんね! わたし、やっぱり帰る!」
背中を向けて、わたしは走り出した。
「沙織ちゃん!」
知世ちゃんが後ろから呼ぶ声は聞こえたけれど、彼女は追いかけてこなかった。