「外に出て、川野くんに会わないようにするには、どうしたらいいかな……?」



そう言いながら、わたしはお皿に手を伸ばし、アーモンド・クッキーをかじった。



「川野、もう桜花がどこの学校に通っているのか知っちゃったもんね。帰り道を変えても、多分見つかると思う」



知世ちゃんも、腕を組んで考え込むように言う。


そういえば、桜花ちゃんの住所は川野くんは知っているのだろうか。もし知っているのであれば、彼女がずっと家にいても、彼が桜花ちゃんの家に来ちゃうのではないか。



「あの、桜花ちゃん……」



今、考えたことを言ったらますます彼女が怖がるんじゃないかな、と思ったけれどやっぱり言っておいた方が桜花ちゃんのためになるかもしれない。



「なあに? 沙織ちゃん」



「あのね、川野くんは桜花ちゃんの家とか分かってる?」



「ううん、分かってないよ」



わたしはおずおずと聞いたけれど、桜花ちゃんはさらっと答えた。



「桜花と川野はね、お互いの家には一度も行ったことがないの。暴力振るわれるようになる前に、桜花は親は留守がちって言ったから」



続けて言った知世ちゃんの言葉を聞いて、わたしは少し安心した。
それだったら、川野くんは桜花ちゃんに会いにわざわざ家に来たりしないだろう。