桜花ちゃんの言葉をずっと聞いていた知世ちゃんは、大きく頷いてから、
「そうだよね。沙織ちゃんがいなかったら、きっとあたしも桜花のことを何も知らないでいたと思う」
と言った。
「うんうん、ありがとう、沙織ちゃん」
わたしはただ、桜花ちゃんに何があったのかを教えただけなのにこんなにお礼を言われるほどのことをしていないと思う。それなのに2人から一斉にお礼を言われるだなんて思わなくて、わたしはぎこちない笑顔で小さく頷くしかなかった。
「ところで、学校に行けなくなったのは川野が原因なんだよね?」
知世ちゃんは、すばり桜花ちゃんに聞いた。すると彼女は、表情を曇らせて頷いた。
「外に出ると、また修二くんに会うことになりそうで怖いの……」
確かに学校が一緒ってわけでもないのに、いきなり会いたくない元カレに会うことになって桜花ちゃんは相当ダメージを受けたんだろう。
「あれ、沙織ちゃん。どうかしたの? もしかして、このお菓子気に入らなかったかな?」
見てみると、2人はお菓子を食べながら会話していることに気がついた。
そういえば、わたしはお菓子を1個も食べていない。
「あ、ごめん! なんでもないよ! クッキーも飴も大好きだから! いただきまーす」
わたしは、慌ててそう言いながらミルク味の飴を取って舐めた。