わたし達は、桜花ちゃんの家のリビングに入った。


中には、どうやら桜花ちゃん以外誰もいないらしい。そういえば、小さい頃からお父さんもお母さんも忙しくて家にはあまりいないって桜花ちゃんも言っていたからね。



「それで、どうしたの?」



クッキーと飴が入ったお皿をテーブルに置きながら、桜花ちゃんは聞いた。



「あのね、沙織ちゃんに聞いたんだ。桜花に何があったのか」



「っ……!」



知世ちゃんが真剣な顔で言うと、桜花ちゃんは息を呑んだ。


そりゃあ親友に知られたくないことを知られたんだから、わたしは桜花ちゃんに嫌な思いをされたに違いない。



「ごめんね、桜花ちゃん。桜花ちゃんには、きっと知世ちゃんに知られたくないことだと思うんだけど……」



わたしの語尾が消えたとほぼ同時に、桜花ちゃんは首を横に振った。



「ううん、謝らないで。沙織ちゃんがいてくれて良かったよ。わたし、やっぱり勇気がなくてさ。知世にもずっと心配かけちゃったし。沙織ちゃんのおかげで、知世も分かったみたいだし」



力のない笑顔で、桜花ちゃんは言った。


いてくれて良かった、なんて言われるとは全く思いもせず、わたしは何も声が出なくなった。