わたしは、知世ちゃんの歩く方向をついていった。何か話すのかと思ったけれど、別に何も話すことなかった。
「よし、着いた」
知世ちゃんはそう言って、足を止めた。
桜花ちゃんと寺本と一緒に歩いていた時に、彼女が入っていた家だ。『栗原』と書かれてあるし、間違いない。
知世ちゃんは、その家のインターホンを鳴らした。
『はーい』
桜花ちゃんの声がした。熱を出した美咲のか細い声とは、やっぱり違うな。まあ、とはいっても桜花ちゃんは体調不良が原因で休んだわけじゃないみたいだからね。
「桜花、来たよ!」
『今、開けるね』
ドアを開いて、桜花ちゃんが出てきた。けど、彼女はやっぱり体調を崩したようには見えなかった。
「知世……。って、あれ!? 沙織ちゃん!?」
わたしの姿を見て、彼女は大きく目を見開いた。
まあ、そりゃあ驚くだろう。昨日までは知世ちゃんだけが来ていたというのに、今日は何故かわたしまで一緒に家に来たわけなんだから。
「桜花ちゃん、大丈夫?」
「うん。……わたし、本当は何ともないから。でもなんで沙織ちゃんまで?」
とは言いつつ、わたしも知世ちゃんに一緒に来るように言われただけで詳しいことは知らない。
「そのことに関しては、家に入ってからでもいい?」
知世ちゃんがわたしの代わりに言ってくれた。
「いいけど……」
不思議そうな顔のまま、桜花ちゃんはわたし達を家に入れてくれた。