わたしは家に帰ってすぐ制服を脱いで、水色のワンピースに着替えた。



「沙織、どこか行くの?」



急いでいるわたしを見て、お母さんが不思議そうに聞いてくる。



「ちょっと……」



「『ちょっと』って……」



「これから、友達のお見舞いに行くの。体調崩して休んでるみたいだから」



桜花ちゃんとは別に奈緒や美咲ほど親しくなっていないけれど、一緒にいるのは前と比べて増えたので、思わず友達と言ってしまった。


けれど、まだ『友達』より『同級生』のほうが良かったかもしれない。


わたしが色々と頭の中で考えていることも知らずに、不思議そうな顔をしたお母さんは、安心したように笑った。



「そう、じゃあそのお友達が疲れないようにね」



「うん」



お母さんに頷いてから、わたしは茶色い靴を履いて、学校へ向かった。



「沙織ちゃん、こっちこっち!」



学校の近くまで行くと、薄紫のシャツに黒いロングスカートを履いた、背の高い女の子がわたしに手を振っていた。


私服で一瞬誰だか分からなかったけれど、あの声は間違いなく知世ちゃんだ。



「知世ちゃん!」



わたしは、ワンピースを揺らしながら知世ちゃんの方へ走った。



「じゃあ、案内してくれるかな?」



「任せて!」



どん、と知世ちゃんは胸を叩いて言った。