第2章〈近い距離〉


夏菜との会話を終えた時、ジャージを着た30歳前後の日に焼けた担任らしき人が前の扉から勢いよく現れた。


担任「みんな、おはよう!今日からみんなの担任になった川瀬だ。まぁお前らは3年だから俺の事知ってるよな(笑)。男子バスケの顧問をやっていて今男子バスケは人が少ないから入部したい奴がいたらいつでも歓迎だ!……よしっあいさつはこのぐらいにして今日は全体朝礼だからさっさと体育館行くぞ!」


担任川瀬筆頭にクラス全員がバラバラと体育館に向かい出し、加奈実も話しかけてくれた夏菜に声をかけられクラスのみんなに続いて一階にある体育館に向かっていた。
みんなと続いて階段を降りようとした時、他クラスであろうとても奇妙なほど肌が白く誰も寄せ付けない異彩な雰囲気の男の子に目が止まった。
彼は1人体育館に向かわず加奈実達と反対に階段を登ろうとしていた。
彼が誰なのか加奈実は夏菜を引き留めた。


加奈実「夏菜ちゃん!今前の方で階段登ろうとしてる肌が白い男の子って誰?」


夏菜「あぁー…男子バスケのエースの伊東だよ。うちは話したことないけどバスケ上手くて顔も綺麗でイケメン。しかも勉強も出来るから陰ではモテててファクラブもあるらしいんだけど肌が異常に白いし愛想ないし何考えてるか分からないって噂あるし…加奈実ちゃん伊東が気になるの?」


加奈実「深い意味はないよ!ただだれなのかなーって思っただけ」


夏菜「そう?ここ三階で降りていって一階の体育館まで距離あるから早く行こー」


加奈実「………夏菜ちゃんごめん…私何か…朝から緊張し過ぎてて…気分が悪いからお手洗い行ってから行くね」

夏菜「大丈夫?一緒に保健室行く?保健室は一階の階段近くにあるけど一人でいける?」


加奈実「一人でいける!夏菜ちゃんありがとう」


階段を降りて行く夏菜を見送り、加奈実は人の波が引くまで邪魔にならないように端で隠れていた。
ようやく人の波が収まった事を確認し上へ続いている階段の前で立ち止まった。
加奈実は、転校初日ということもあり全体朝礼を夏菜にうそをついてまでさぼってしまった罪悪感を感じた。
今からでも体育館に向かうか悩んだが伊東に対しての興味がまさってしまい階段を恐る恐る登った。
登った先には屋上の扉でしゃがんで寝ている伊東の姿が見えた。
伊東は加奈実の気配に気づき顔を上げた。


伊東「…お前誰?…俺になんか用?」


加奈実「あの…みんなと一緒に朝礼行かないんですか?」


伊東「…行かない。…お前は行かなくていいの?」


加奈実「うん」


伊東「へー…見た目真面目そうなのに…」


加奈実「別に真面目じゃないよ。隣…座っていい?」


無言で伊東が頷き隣に座った。
加奈実は座るその時、近くで伊東の肌を見ると気持ち悪いくらい白過ぎるとことに改めて不思議に感じた。
聞くか迷ったがどうしてそんなに白いのか気になり伊東に問いかけた。


加奈実「ねぇ。どうしてそんな肌が白いの?加奈実も白い方だけど白過ぎるよ(笑)」


伊東「…俺太陽の光が苦手なんだよ。」


加奈実「嘘?(笑)それだけ?」


加奈実が伊東の顔に近づいた


伊東「…なぁお前顔近すぎ…離れて」


加奈実「?ごめん近づきすぎた…でも太陽が苦手なだけじゃないんでしょ?」


伊東「…俺の家族みんな色白なんだよ…もういいだろ」


加奈実「やだ!加奈実もお肌白くなりたいもん!伊東くんみたいになりたい!」


加奈実はまた伊東の顔に近づいた


伊東「お前変わってるな。みんな色白過ぎて俺の事怖いとか言う奴いるけど。俺みたいに色白になりたいって初めて言われた。…おい。お前、無意識かもしれないけど顔…近過ぎ。2回目だからな次顔近づけたら知らねーからな」


加奈実「?…ごめん。気をつける。あっ名前、私加藤加奈実っていうの。よろしくね」


伊東「……加藤加奈実…」(小声)


加奈実「ん?何か言った?」


加奈実は伊東に忠告されていたがまた顔近づけた


伊東「…次顔近づけたら知らねーって言ったかんな…」


加奈実「伊東く…んっ痛い!?」


伊東はいきなり加奈実の首筋にキスをしてキスマークをつけた。
目が合い伊東の色素の薄い茶色の目がほんのり赤くなっていたように見えた。
伊東はすぐ慌てて顔を背けて口を覆った。
加奈実は首筋にキスされさらにキスマーク付けられると思ってもいなかったので頭が真っ白になり、俯き伊東の顔を見れなかった。


伊東「…俺忠告したからな」


加奈実「…それは…そうだけど…」


2人の沈黙が続いたのち下の方から全体朝礼が終わった生徒の声が騒がしく聞こえてきた。


伊東「…ごめん…俺先に教室戻る」


加奈実「うん…」


伊東は先程の慌てた様子もなく階段を降りていった。頭の整理が追いつかないままの加奈実も階段をおり教室に戻る騒がしい生徒に混じり自分達の教室に向かった。