パッと顔を上げた先、そこには同じ色の制服を着た男の子が自分と同じように地面に転けていて。


「ごめんなさい、大丈夫ですか?」


立ち上がり手を差し伸べると、ゆっくりとその人はこちらへ視線を移した。




綺麗。


何のためらいもなく、そう思った。


栗色の少し長い前髪から覗く気力のなさそうな奥二重の瞳。

男の子にしては幾分と白く、キメの細やかな肌。



「あの、」


すぐにその視線は下へと戻され、その人は自分でパッと立ち上がった。


意味をなくした自分の右手が行き場をなくしてしまって。


ぶつかってしまったこと、相当怒っているのだろうか。


なんて。

ぼんやりと考えている暇は、私には無い。



「すみませんでした、」


飛び出たポーチや教科書を乱雑に詰め込み、なんの反応も示さずじっと私の方を見るその人にぺこりと頭を下げて再び走り出そうとした時、

近づいた影。

ふわりと前髪に何かが触れた。



「せっかく綺麗にセットした髪、乱れてる」



ボサボサになった髪を整えたのは、その人の手だった。