「そうさ。だから僕と結婚しよう。率直に言うが、僕も君に恋をした訳じゃない。ただ、会話して君の聡明さを好ましく思うし、結婚しても女主人として家を守り僕が仕事に邁進する為に支えてくれるだろう。勿論、君が望めば司書の仕事を続ける事も認めよう。はっきり言うが、君にとってご実家が居心地の良い場所でない事も調査で分かっている。どうだろうか？君にはとって最善の提案だと思うよ、グレース」

淡々とまるで仕事ように話し続けるカーライル子爵を見つめながら、グレースは別の事を考えていた。

他人の口から淡々と語られた現実は、やけにドライなものに感じて上手く理解出来なかった。だから、おうむ返しのような返事しか出来なかったのだ。

でももし、それが本当だったら？グレースの夢の為にヴェネディクトが犠牲になっただけだったら？
自分がひどく汚れた存在のようで身体の芯から冷えていくようだ。

思わず両手で自分を抱きしめたいグレースにカーライル子爵は気遣うように声をかけた。