急に自分の心の底を見つめ出したグレースの手にカーライル子爵が触れた。

「!」

「ああ、いや、すまない。急に考え込んでしまったようだから。僕の話を続けても?」

「あ、ええ。はい、ごめんなさい」

今は話を聞く時間だ。

「で、僕がこの一週間で調べた結果から導き出した結論はこうだ。君達は婚約はしているかもしれないが、恋はしていない。グレース、君の図書館司書になるという夢を叶える為にヴェネディクトが犠牲になって急いで婚約した。間違っているかな?」

「恋はしていない……」

「そう。大切な幼馴染の夢を叶える為にヴェネディクトが男気を見せたってところだろ?でもねグレース、君が夢を叶える為だけなら相手は僕でも大丈夫なんだ」

「夢を……カーライル子爵でも……?」

「僕の一族には何人か王立図書館に勤めている人がいてね。レディング伯爵は王立図書館に顔がきくんだ。だから僕の婚約者だと頼めば面接でも有利になる。ヴェネディクトと婚約するより、もっと」

「有利になる……」