「…あぁ、もぅ…最悪っ!」
《手持ちのお金…768円か。。

何とか、ファミレスのフリードリンクは賄える…

通帳には、確か…1000円あるか…、ないか…っ。。

どうすんだ? これから。。


人生とは。。
山あり…、谷あり…だと人は言う…


が、私の場合。。
谷底ばかり…な、ような気がする…

これから先も…、こんな谷底ばかり…な気がしてならない。。

これから先…、何処までの奈落の底…に、落ちていくのかな?

て、考えただけで…泣けてくる~~っ!

26歳にして…、人生、悟ったな~!》

と、重苦しいため息をつき…、テーブルに突っぷしそうになった…

もぅ、涙も枯れ果てて…、出てこない…とは、この事だ…と、思った時。。


その視界の中に、ブルーグレーのスラックスが見えた…

「あの、松永 実咲(みさき)さんですか?」

…と、頭の上から聞こえた声…に、この物語の主人公・実咲は、おもむろに顔を上げる…

【この声、好きだな】…と、本当にそぅ、思えた…


自分のことを、覗き込んでいる20代中盤の男性…、ブルーグレーのスーツに髪型も黒髪でキッチリしている…シルバーフレームのメガネをかけてはいるが、かなりのイケメンだ…

「っあ! はい!」
《そぅだった…。。

あまりに、悲観的…な悲惨な状況だったけど…無料法律相談に電話してたのだったゎ…》

と、小一時間前の…出来事を思い出した…

衝動的…に、弁護士事務所の無料相談を頼み、ファミレスで待ち合わせをしている所だったのだ。

その、男性の声に…実咲は、すぐさま、顔を上げ…、引き攣りながらも笑顔を見せる…

「こんにちは…っ」
《て、この人…

どっかで見たことがあるような気がするんだけど…

こんなカッコイイ知り合い…いたっけかな〜?》

「遅くなり…すいません。
S&M法律事務所の漆原です。」

と、名刺を実咲に渡し…、にこやかな笑顔を見せる…

実咲は、その見覚えがある…と、思った人物の名を聞き…、一瞬…胸の鼓動が早まったような気がした…

「う…、漆原…さん?」
《って、もしかして…

私の…、高校生時代の想い人…と、同じ姓っ?》

「はい、よろしくお願いします」

と、その男性弁護士は、実咲の目の前の席に腰を下ろし、満面の笑顔を見せる…

「ま、松永 実咲です。すいません、わざわざ…」
《凄いっ! イケメン!

で、弁護士なんて…、世の中…何でこんなに差があるの~?

で、【漆原】…って、彼と同じ苗字なんですけど?》

目の前の席に腰を下ろした…その弁護士・漆原は、鞄の中から…A4サイズのノートを取り出し…。。ブランド物のペンを取り出した…

その時に、左手の薬指に光ったリング…

「……」
《あ…、左手に指輪…。。

結婚してるのか…、この人。

なんだ…、ちょっと残念っ》

と、瞬時に思ってしまった…。。【いやいや! ナニ、言ってんだ?】と、すぐ様、その考えを改める…

一気に、舞い上がってしまった?…かと、思いきや…またまた奈落の底に落ちたような心境だった。

先程までのトキメキは、微塵に崩れ去ってしまっていた…

「先程、伺った話を…もう1度、確認させて貰ってもいいですか?」

と、あらかじめ…電話相談した内容が書かれた…そのノートを再確認しながら…、その漆原と名乗った弁護士は話し始める…

「同棲していた彼に、貯金を持ち逃げされ…、借金の連帯保証人にもなっていた…。
アパートの家賃は、その彼が滞納していたのを知らず…に、退去命令が下りている…
で、その彼に棄てられ…ショックで、派遣先の会社を休んでいたら…派遣切りにあった…
と、言うこと?」

「…あ…、はい…」

力なく…、頷きながら…言った実咲…内心、【我ながら、酷い状況だゎっ!】と、苦笑いを浮かべる…

彼は、掛けていたメガネを外し…、ため息をつき…

その、メガネを外した素顔に、実咲はドキンとした…