屋上から降りて直ぐにあるトイレに人がいないことを確認して、水道の水を顔にかける。

泣き後 少し残っちゃったなぁ。


顔をハンカチで拭いトイレからでる。
よし、ここからは切り替えないと。

教室に入ると "うわ、帰ってきた" なんてコソコソと聞こえてくる。

そんな事は放っておいて自分の席に座る。
机の上には英語のノートが置かれていた。

「ちょっとみて、梨桜!若生くんが居る」

「えっ、どこ?」

「廊下だよほら!カッコイイ」

「マジイケメンだよね 彼女居るんだろうな」

「目の保養だよね(笑)」

私の悪口が止まったと思えば、廊下を通った隣のクラスの男子に夢中になっている。

若生 澄晴。 整った顔立ちから彼の事を好きになる女子が多い。

見た目だけでチヤホヤされるのはいい気持ちなんてしない。


私のイジメの始まりは、些細な事からだった。
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「ねぇ、藍川さん」

「うちの友達の沙理奈がさ、あんたに彼氏取られたって言って泣いてるんだけど」

「沙理奈?誰か知らないし。その彼氏も知らない」

「嘘つくなよ。廊下で匠海くんと楽しそうに話してたじゃん。しかもSNS交換したんでしょ?」

「あ、あの人。私は誰かもわからず急に話し掛けられて、クラスや名前聞かれたの。 それとTwitterのアカウントをしつこく聞いてくるから答えただけで私はフォロバしてないし。ただ一瞬話しただけで彼氏奪ったってなるの?」

「ふざけてんの? 匠海くんが藍川遥妃のことを好きになったからとか言って沙理奈のことふったんだよ?」

「だから知らないって。それ私悪くないじゃん。匠海って人の事怒りなよ」

「沙理奈から匠海くんのこと奪ったのにどの口が言ってんの?」

「マジでウザイんだけど、ね、京香」

「… 京香、」

「……」

罵倒する女子の中に居たのは京香。
高校に入って初めてできた友達。


「遥妃、あんた最低だよ」


あぁ。友達ってこんな簡単に居なくなるんだ。
京香は下を向き、赤の他人のような目をしている。


「こいつと話して分かった。人の彼氏に平気で手を出すような女って事だ。男子は気づいてないんだ~可哀想。こいつクソなのに」

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それからと言うものずっと陰湿ないじめが続いている。 教科書が無くなったり、Twitterのアカウントを乗っ取られたり。

友達と思っていた京香をはじめクラスの女子に味方はいなくなった。

顔が少し整っているからという理由で、男子は私によく話し掛けてくる。
そんな私を妬んでいる女子達は、私が男子と目を合わすだけで「色目を使っている」「男たらし」などと言ってくる。

理不尽な理由から始まったいじめはいつまで続くのだろうか。