「奈々ちゃんは1人で来るの?」
「うん。学校には同じような趣味の子がいなくて。だからいつも1人で来てる。友達ときたとしても、その子はこのフロアには来ないかな」
「どうして?」
「腐女子好きじゃないんだって。なんでかはわからないけど...」
奈々ちゃんはそう言うと寂しそうな顔をして目線を下げた。
やってしまった!
私の無神経な質問のせいで奈々ちゃんを傷つけてしまったかもしれない。
「ごめ...」
そう私が謝ろうとした時だった。
「本当は1人で来るの嫌なんだ」
と奈々ちゃんは私の言葉を遮りそう言った。
ゆっくりと顔を上げた奈々ちゃんの瞳は私に何かを訴えているように私を真っ直ぐに見つめていた。
「学校では変な目で見られるのが嫌で、話もできなくて。恋バナとかでみんなで話していても、これは本当の私じゃないって嘘の自分なんだって思うの」
あ、この気持ちわかるかも。
奈々ちゃんの言葉で中学時代の自分のことを思い出した。
嘘の自分。
そうだ、私もそうだった。