夏休みまであと4日。
「それでさ〜」
私たちは教室で普通にBLについて語り合っていた。
3人でいればどんなに大きな声で下ネタを言っていようと変な目で見られていようと気にならなくなっていた。
女子としては気にしなければいけなのだけれど。
まぁ、女子校だからね?
「やっぱり禁断の恋っていいよね〜」
「それな〜」
「しかもさ、好きなシーンとか何回も読んじゃうよね」
「あ〜2人のイチャイチャを間近で眺めたい。いや、拝みたい」
「寝室の何かになりたいよね〜」
なんて語り合っていると
「私さ、腐女子になってみたいんだけど...」
と1人の女子が私たちの話に入ってきた。
彼女は同じクラスの西城結衣。
結衣とはあまり親しいわけでもなく、普通に会話をするくらいの友達だった。
アニメや漫画にも興味があるなんて聞いたこともないし、ましてやBLに興味を持つような子ではないと思っていた。
そんな結衣に突然「腐女子」になりたいと言われ、一瞬その意味が理解できなかった。
それに腐女子ってなろうと思ってなれるものでもないし。
だって私は腐女子になりたいって思ってなったわけではなく自然と沼にはまっていったからだ。
花音とののかも不思議そうな顔をしている。
「あ、腐女子になりたいっていうのはさ、3人がすっごく楽しそうに話してて内容も面白そうだったから......」
私たちの反応が予想外だったのだろうか、それとも私たちが変なオーラを出してしまっていたのだろうか
「ご、ごめん」
と結衣は申し訳なさそうに言った。
「いや、謝らなくて大丈夫だよ。ただちょっとビックリしちゃったから」
少し悲しそうな顔をしている結衣に私がそう言うと、彼女は不思議そうな顔をした。
「だって今までそんなこと言われなかったから、ねえ?」
私はそう言って花音とののかを見る。
2人は何も言わないが、私の言葉に賛同し大きくうなずく。
「そうなの?」
「なんて言うのかな〜私たちは腐女子になりたいというか、自然になっちゃった人たちだからさ」
「そうなんだ、なんかごめんね」
「あ、いや、嬉しいよ!」
「嬉しい?」
「だって仲間が増えるんだもん。嬉しいに決まってるじゃん!」
「そうだよ、私たちがいっぱい教えてあげるよ」
「うんうん、私も漫画貸すよ?」
と花音とののかも話に入ってきた。
よく見ると2人の目がギラギラと輝いている。
やばい、この人たちは結衣を沼に引きずり込もうとしている。
まるで沼の中から人々を引きずり込む恐ろしい妖怪のようだ。
「ほんとに!?嬉しい!」
その妖怪たちにまんまと沼に引きずりこまれていく結衣。
まあ、私も沼に引きずり込んでいく妖怪の方なのだけど。
「腐女子になるきっかけなんてみんなバラバラなんだから。でもなっちゃったらみんな仲間だよ」
私も花音とののかとともに結衣を引きずりこもうとちょっとかっこよさげなことを言ってみた。
「すごい!かっこいいね!」
するとそんな私の言葉に結衣は目をキラキラ輝かせた。
「か、かっこいいかな〜私も仲間になりたい!」
よし!
「腐女子として生き、そしてBLを愛し続けると誓いますか?」
「はい、誓います!」
「それでは、腐女子会へようこそ!」
私と花音とののかはそう言って結衣の手を握った。
「う、うん!」
結衣はそんな私たちの手を握る。
「よっしゃあ!会員が4人に増えたぞ!」
私はそう大きな声で叫んだ。
「おー!」
他の3人も叫ぶ。
そんな私たちをクラスの子達が不思議そうに見ていた。