『笑い事ではありません、姉上。もう公爵家の迎えは来てしまっているのですよ? いまさら娘はおりませんでは、我が家の面目が丸つぶれです。とりあえずはこのローズを身代わりにして公爵家に送り込み、至急トリスの捜索を……』

 そこでローズは、ちぎれんばかりに首を振った。

『だからっ! 無理です、旦那様! いつもの顔も見せない家庭教師や客人とは違うのですよ?! 婚約者様に、もしもバレでもしたら……!』

『大丈夫。お前ならきっとやり通せる』

 なぜそう思う。

 絶望するローズの肩に、クリステルがげたげた笑いながら、ぽん、と手をおいた。

『今までみんなをだまし続けた罰だと思って、がんばんなさいな、ローズ』

『やりたくてやっていたわけではありませえええん』