ベアトリスが伯爵令嬢らしくない奔放さで生きているのも、この伯母の影響が大きい。子供のないクリステルは甥姪たちをとてもかわいがっていたが、とりわけベアトリスはお気に入りで、『結婚するくらいなら私の養女に』とずっと狙っていたのだ。ベアトリスも半分くらいその提案を受け入れていたが、リンドグレーン伯爵はとんでもない! とまったく相手にしなかった。

 ちなみに、クリステルも事前にこの結婚を知らされており、昨日馬車一台分のお祝いの品をもってすでに伯爵家にやってきていた。
 自分の養女とならなかったのは残念だろうだが、彼女が良い家に嫁ぐことが決まったことを、クリステルは心から喜んでいた。

 そのクリステルにリンドグレーン伯爵が事の次第を説明すると、彼女は豪快に笑った。

『駆け落ちですって? 素敵! トリスったらやるわね。この私ですら、駆け落ちなんてしたことないのに』