「な、なせくん、、」


「ん?」


「あの、これは、、」


「お化け屋敷といえばこの展開じゃない?」




ぎゅっと抱きしめる手に力を込め、さらに私の腰に手を回しながらニコニコと笑う七瀬くん。




ーーーー…想定外。



私がやろうとしてたことは腕を組むまでで、こんな密着する予定なんかこれっぽっちもなくて、想定外の出来事に心臓がいつもの倍早く動き出す。



というか、この距離はだめだって。

くっつきすぎ!ありえないくらい近いの!




「え、えっと私もう怖くないから離してもらっても大丈夫かな〜なんて」



七瀬くんをドキドキさせるはずが私がドキドキさせられてどうする。

と、とりあえず仕切り直さなければ。

こんな距離耐えられない。



そう思い、なんとか七瀬くんの腕から脱出しようと試みるものの



「俺が怖いからこのままで」

と更に力を強められる始末。





「いやいやいや、さっきまでお化け見て笑ってましたよね!?すごくすごく余裕そうでしたよね!?」



「ン?コワクテシカタナカッタヨ」


「片言になってますけど!?」


「まあ、これじゃあ歩きにくいか」





そうだよ、抱きしめられながら歩くなんて聞いたことないから。



七瀬くんは「残念」と呟き、私を腕から解放した。


………ああ、ドキドキした……


こんな美少年に抱きしめられるなんて。


どくどくと全く静まらない心臓に早よ静まれと悪態をつきつつ深呼吸をする。





息を吐きながら思うことは

七瀬くんはいつも私の斜め上をいく
ということだった。