そして迫り来るお化け屋敷への恐怖心を和らげるために、必死に頭の中をクレープで埋め尽くす。

それでも着々と進む列に足がすくんだ。




「ようこそ〜魔の住む館へ」

あああ、ついに、ついに来てしまった。

顔面蒼白になっているであろう私に対し、七瀬くんはニコニコとキャストさんの話を聞いている。




そしてキャストさんの説明が終わり、少し暗めの懐中電灯とお札を渡され奥へ進むように促された。

そう、この先が本番なのだ。



ぎゅっと懐中電灯を握りしめ、恐る恐る暗闇に足を踏み入れていく。

怖い怖い怖い。


絶対なんかくる、前も警戒しなければいけないけれど横も後ろも要注意なわけで、四方八方を見渡しながら歩く。



一方、七瀬くんは

「ねえ、なんで笑ってるの」

私の挙動があまりにおかしいのか
くすくすと肩を揺らし笑っていた。




そして、笑っている七瀬くんに気を取られていて
私は気づかなかったのだ。

そう、背後に迫り来る影に。






「………〜オオオオォォォ……」


背後から地から這い上がって来たようなうめき声が聞こえ、まさかまさかまさかと思い、恐る恐る後ろを振り返る。





そこにいたのは、暗くてもわかってしまうくらいの赤い血を全身になれ流している、おばけ(役)だった。





「ばけ、ばけ………おばけええええええ!!!
いやあああああああ!!!来ないでこないでこないで!!あっちいって!!!血ついてる!全身についてるよ!!!!!!!ああああああああ!!!」







そして横にいた七瀬くんは、私の断末魔を聞いてついに

「……っ、ははっ」

吹き出した。






「はあああああ!?!?七瀬くん?今笑ってる場合じゃないんだけど!?!?おばけ来てるんですけど!?!?
ってああああああああ!だから来ないでってば!!!」





ドスドスと迫り来るおばけに必死に訴える。


「ごめんごめん、よし。逃げよっか」



そう言って七瀬くんは私の手を掴み、早足で歩き始めた。



彼に手を掴まれたことにより少しずつ冷静を取り戻していく。


七瀬くんが前を歩いてくれているおかげで幾分ばかりましになった。