「━━━ ある日の暮方の事である。一人の下人(げにん)が、羅生門(らしょうもん)の下で雨やみを待っていた。広い門の下には ━━━……」



現国の先生の声が教室に響く。



始業式は30分で終わり、午前中に2時間授業をしてから下校になる。

1限の数学はオリエンテーションだけで50分の授業が終わってしまったが、2限の現国はオリエンテーションが早々に終わり、もう文章を読み始めることになった。




みんな 春休み疲れをしているのか、いきなり本格的な授業が始まって当てが外れたのか、教室は少し気だるげな空気が流れている。


私もさっきから頭がぼんやりとしてきて窓の外に見える桜を眺めながら、先生の音読を聞き流していた。





「━━━━では、己(おれ)が引剥(ひはぎ)をしようと恨むまいな。己もそうしなければ、饑死をする体なのだ。 下人は、すばやく、老婆の着物を剥ぎとった。━━……」






そうだ、いけない事だとわかっていても、生きていくためには仕方がない。


それは、みんなが私を空気のように扱い、関わらないようにするのと同じだ。




私がみんなの立場でも同じ事をする、、、



だって、あんな事件があったのだから━━━━