――夢をみた。
あったかい大きな手が、あたしの頭を優しく撫でて。
幸せすぎるほど幸せな、夢。
「……おーい、」
本日、二度目。
誰かに呼ばれたような気がして目を開けたあたしの目の前には―…
「…小野チャン?」
今日は本当によく起こされる日だ。
1回目は咲、2回目は小野チャン。
「及川、ヨダレたれてんぞ。」
「!!?」
慌てて口元を押さえたあたしを見て、小野チャンは意地悪に笑いながら「うっそー」と言った。
「~っ!」
口を押さえた手はそのままに、キッと睨みつける。
本気で焦ったあたし、バカみたいじゃん!!
「…つーか、あまりにも遅いから様子見にきたんだけど。」
「え?」
いつのまにか呆れ顔に変わっていた小野チャンの顔を見て、パッと外を見る。
…暗っ!!
「そしたら案の定、おまえ爆睡してるし。」
「…す、すいません。」
急に恥ずかしくなったあたしは、小野チャンの顔を見ることができなくて、俯いたまま謝った。
「まぁ、いいけど。」
あんまり心配かけさせんなよ、というぶっきらぼうな声とともに、大きな手があたしの髪をぐしゃぐしゃと乱す。
「ちょっと!!セットが乱れる!!」
「うるせ。」
――小野チャンの手を振り払おうともがきながら、あたしは思った。
あの、夢に見た大きな手は、きっと小野チャンだったんだ、って。