するとその時、神田くんが私の手を引いてきて。
体が彼のほうへ傾いたかと思うと、そのまま抱きしめられる。


「それで、涼雅からの連絡はどのようなものでしたか?」


ひどく落ち着きのある声。
さらに彼は私を抱きしめながら、頭を撫でてきた。

その手つきが優しいため、不安が少しだけ和らいだ気がして。


「……あ、あの、この子には聞かれないほうがいいかと」

「白野さんはもう俺の恋人です。
なので、何を聞かれても大丈夫です」

「え……」


明らかに宮橋先生の声のトーンが落ちる。


「本当に言っているのですか?」

「もちろんです。もう今の俺には、白野さんが必要でたまらない。そばに置いておきたい存在に変わりました」


私の頭を撫でながら話す神田くん。
なんだかペットにでもなった気分だ。


「……拓哉さん、どうして」

「華さんが警戒するのはわかりますが、白野さんは大丈夫だと何回も言っているはずです」

「……っ」

「話しにくいのなら、涼雅から直接聞くので大丈夫です。
報告ありがとうございました」


抱きしめられているため、宮橋先生の姿を捉えることはできなかったけれど。

嫌な空気が教室内を流れる。


宮橋先生が私のことをあまりよく思っていない、ということは十分伝わった。


「失礼します…」

宮橋先生の弱々しい声を最後に、教室のドアが閉められる音がした。