「また嘘ついたの?白野さんって結構嘘つきだね」
わかっていたくせに。
わざと騙されたような顔をして、私を悪い人扱いする。
「いつも意地悪ばかりしてくるんだもん」
私は悪くないという趣旨を込めて話す。
けれどまた、逆効果なことを言ってしまったようで。
「意地悪されるのは嫌?」
「……嫌だ」
「そっか。でも俺は嫌じゃないよ」
そんなの当たり前だ。
神田くんは楽しいに決まっている。
今だってそういう表情をしているし、本当に酷い人。
「ほら、わかったら手を離そうね」
少し首を傾け、幼い表情へと変わる神田くん。
そんなかわいい顔したって騙されない。
「神田くんが離してくれないと、離してなんかあげない……」
ぎゅっと、彼の手首を掴む力を込める。
そうじゃないと簡単に解かれてしまいそうだ。
「でもリボン付けないと」
「自分でやるからいいの」
「んー、でもなぁ。せっかく解いたんだし、このまま素直につけるのはもったいないね?」
悪いことを思いついたように笑う神田くんから、私は目をそらす。
嫌な予感しかしない。
「早く離してくれないと怒る…」
「白野さんの怒ったところも見たいな」
「……っ、神田くんのバカ」
「すぐ暴言を吐くのは白野さんの悪いところだね」
ついに彼が動き出してしまう。
今度は空いているほうの手で、シャツのボタンに手をかけられた。
ひとつ外されたところで私も反応し、もう片方の手首も掴む。