「さっき、乱暴なことしてごめんね。
痛くなかった?」

「…痛かった」
「やっぱり痛かったよね…ごめん。怪我はしてない?」
「……した」


痛かったけれど、それは体を壁に押し付けられた一瞬だけだったし、怪我なんてひとつもしてないけれど。

少し嘘をついてみる。


「……なら今すぐ確認しよう」
「へ…」


いつも意地悪ばかりしてきて、やられっぱなしだから。
たまにはやり返そうと思ったけれど。

何故だか嫌な予感がする。


「背中だよね、きつくぶつけたの」

「え、いや…あの、腕をきつく掴まれて痛かったなってだけで…」


「でも腕は怪我してないよ、ほら。
無理して我慢しなくていいんだよ、責任とるから」


神田くんが私の腕を一度確認する。
もちろん怪我なんてあるはずなく。

おかしい。


確かに心配されてはいるけれど、彼の様子がどこか心に引っかかる。


「責任なんて、そこまでは…っ」

その時。
神田くんの手が、私の制服のリボンへと触れた。


嫌な予感は的中して。

「か、んだく…」


私の言葉を完全に無視し、簡単にリボンが解かれてしまう。

これは本当にやばいと危機感を抱くけれど、神田くんはシャツのボタンにまで手を添えてきて。


「だ、ダメっ…」

慌てて彼の手首を掴む。


「どうして?もし流血でもしてたら危ないよ」
「う、嘘ついたの…ちょっとだけやり返そうと…」


仕返しをしようと試みるけれど、いつも失敗して逆に私の立場が危うくなる。

今回だってそう。
余裕の表情である神田くんの姿があった。