「そんな場所、あるの?」
「うん、俺の家だよ」
さらっと質問に答える彼。
「…神田くんの、家」
想像できない。
最初は怖いかもしれないって、どんな感じなんだろう。
テレビの影響で、普通のビルにヤクザの人たちがいるというイメージが強い。
「うん。そこだとセキュリティもしっかししていて安全だし、いざという時の武器だって揃ってるから」
武器、という言葉にどきりとする。
神田くんの生きる世界は容易に想像できないけれど。
きっと想像を絶するほどの危険な世界なのだろう。
「だから休みの日、俺の家においで。
それならいい?」
少し首を傾けて、私に優しく聞いてくる…けれど。
私は彼の言葉を拒否するかのように、首を横に振った。
「……それもダメ?」
「…ダメ。休みの日だけじゃ嫌だ、それに私は神田くんがいるならどこでもいいの」
休みの日に彼の家。
それだけじゃ足りないと思った。
今の私、すごくわがままだ。
「怖くない、神田くんがいれば怖くないから…」
少しでも長い時間、神田くんと一緒にいたいなって。
欲ばかり深まっていく。
「……っ、何それ。
落としてからあげるの、本当にずるいよね」
「……え?」
「今の言葉、撤回するとかなしだからね」
「撤回しないもん。絶対しない」
だから彼のそばにいたい。
この不安な気持ちが消されるくらいに。
「もー、結局白野さんの純粋さにやられる」
神田くんは少し不満な表情をしながら、頭を撫でてくる。
2日間の休日を挟んだだけなのに、こうして頭を撫でられたり、触れられるのが久しぶりな気がして。
自然と頬が緩む。
心がぽかぽかと温かくなる。