「さ、誘われてないもん」
嘘つき。
昨日は宮橋先生といたくせにって、思う。
途端に胸が苦しくなり、昨日のことが頭によぎった。
神田くんに聞くか、それとも聞かないか。
ふと心の中で揺らぐ自分がいた。
「誘っていいの?」
「え……」
少し驚いた様子の彼。
どうしてこんなにも驚いているのだろう。
「怖くない?」
「怖い…?」
「俺と学校外で会うの」
怖いだなんて思うわけがない。
この間だって最初は怖かったけれど。
神田くんと会った瞬間、その気持ちが和らぎ、いつの間にか消えていたのだ。
「怖くない、神田くんがいれば何も怖くない…」
だから私じゃなくて、宮橋先生といたの?
もしそうだとしたら私はずっと神田くんと一緒にいたい。
私の代わりを作ってほしくない。
けれどもし、違うかったら?
宮橋先生との関係のほうが濃かったから。
深い関係だとしたら。
宮橋先生の代わりが私だったとしたら───
「やっぱり怖い、よね」
「……っ、違うの」
「無理しなくていいよ。顔に出てる」
嫌だ。
このままだとまた、神田くんは宮橋先生のところへ行ってしまうかもしれない。
「怖いなら安全な場所にしよう」
「安全…?」
「最初は怖いかもしれないけど、慣れたら安全な場所」
どうやら彼は誤解しているけれど、学校の外でも会ってくれる趣旨の話をされてほっとする私。