「そんな化粧なんかして、今日もその男と遊びに行く予定なの?」

「その、男…」


まったく話が読めない。
いったい神田くんは何に怒っているの?


「そんな鈍感なフリ、もういいから。
本当のこと言って」

「本当にわかんないんだもん…考えてるけど、わからないよ…」


首を小さく横に振る。
中々信じてくれない彼に対し、涙が滲んだその時。


「昨日、他の男とデートってやつ、したんだよね?」

まだそっけない彼の声だったけれど。
それ以上に今の言葉が引っかかった。


昨日、他の男とデート───


「……っ、ち、違う!」

思わず大きな声を出してしまう。
そんな私を見て、神田くんは目を見開き驚いた様子。


「あ、あの、あのね神田くん…」

急いで誤解を解こうとしたけれど、その分焦ってしまい言葉がうまく出てこない。


「……焦らないで。
ゆっくりでいいから、ちゃんと俺に説明して?」


神田くんの声が少し柔らかなものへと変わった気がした。

少しの安心感が胸に広がり、ようやく落ち着いて話すことができた。


「昨日はお兄ちゃんと出かけてただけで…みんな、誤解してたけどね、お兄ちゃんなの。本当に似てなくて、一緒にいたらいつも誤解されるんだけどね、あの本当に…」

「もういいよ」


必死で誤解を解いていたら、神田くんからストップがかかる。

うざいって思われたかと不安に思ったけれど、神田くんの表情を見て安心した。

今の神田くんは冷たい表情が和らいでいたからだ。