「ごめん、さすがにやりすぎちゃったね」


神田くんの大きな手が私の頬を包んだ。
そして自分と目を合わさせるようにか、顔を上げられる。

視線が交われば、彼は嬉しそうに目を細めて微笑んだ。


「泣かないで。
白野さんの本音が聞きたかっただけだよ」

「本音…?」

「嘘つき扱いだけされて、白野さんの気持ちは聞けてなかったから」


私の気持ちを聞きたくて、こんなことをした?
それってつまり……。


「じゃあ、帰らなくていいの?」

まだ、神田くんと一緒にいられるってこと?



「帰らないで。
もし白野さんがあの時帰ってたら俺、相当へこんでた」


やっぱり、神田くんは私を本気で帰らせようとしたつもりはないらしくて。

安心感が胸いっぱいに広がる。


「よかった…」

「うん、俺も良かった。
白野さんのかわいい本音を聞けて」

「……っ」

かわいい本音だと言われたほうが恥ずかしい。
多分彼はわざとだろうけれど。

恥じらいもなく、そんなことを簡単に言ってのけるのだ。


「でも、まだ足りない。
もっと俺の知らない白野さんを教えて。

わがままも、本音も全部。隠そうとせずに俺に言ってくれていいから。俺はそれを望んでる」


神田くんは私の返事を聞く前に、手をそっと握ってきた。