「白野さんの時間まで無駄にするのは良くないと思うから」


私のことを考えてくれての言葉だったけれど。
それは嫌で、首を横に振る。


「やだ、見せてあげない」

それならノートを神田くんに渡さない。
絶対渡さない。

ノートを受け取ったら用済みだ、とかそういうのは嫌。
私は放課後、神田くんと一緒にいられると思っていたのに。


「見せてくれないの?」
「見せないもん」

「どうして?」
「だって、神田くんが……神田くんが」


ああ、そっか。
ふたりになりたいと思っているのは、私だけなのだ。

昨日、空き教室に誘われて。
神田くんと一緒に過ごせると浮かれていたのは。


そう思うと、途端に悲しくなる。


「白野さん?」
「……神田くんのバカ」


涙がじわりと目に浮かび、泣きそうになるのを必死で堪える。


「私は、神田くんと一緒にいたいのに……ノートだけ借りるなんて言わないで」


絶対、面倒くさい女だと思われた。
わかっているのに本音を全部こぼしてしまう。

神田くんの反応が怖くなり、じっと俯いていたら───