「か、かん……っ、佐久間、く…」
危ない。
また癖で神田くんと呼びかけてしまった。
「惜しい、もうすぐで意地悪できたのに」
そんなこと言って。
私が神田くんと呼ばなくても、意地悪するくせに。
「でも、バレたらダメなんだよね…?」
神田くんという、本名を。
だからこそ私にも“佐久間くん”と呼ぶように言った。
「まあ、そうだね。
バレたら最悪面倒なことになるから」
ほら、やっぱりバレたらいけない。
それなのに彼は軽い調子で『惜しい』だなんて言うから、本当かどうかわからなくなるのだ。
「じゃ、じゃあ佐久間くん」
「どうしたの?」
「手を離してくれないと、見えないよ」
「白野さんは学習しないからダメ」
学習しないって、何をだ。
神田くんに注意された覚えはない。
「何もしてないもん」
「涼雅の言う通り、無自覚が一番悪い子だからね。
それならいっそのこと、視界を奪おうかなって」
どうしてそのような発想に行き着くのだろう。
視界を奪おうだなんて、普通は考えない。
やっぱり神田くんは危険だ。
考えが読めないから余計に危ない。