「んでさ、うさぎちゃんに訊きたいんだけどね……ここどこ?とりあえず、日本だよね?」

「うん」

「関東?」

「うん、東京」

「……何区?」

「K区だけど」

「は?まじで?ちょっと住所教えて?」

私は自分の家の住所を伝えた。

「近っ!!駅挟んで反対側だけど、歩いて行ける距離だし!」

「え?そらくんもK区?」

「うん」

「え、じゃあ、歩いて帰る?」

「確かに!よしっ、普通に玄関から帰ろう」

私達は早速玄関に向かった。

「でも、ちょっとだけガッカリ」

「え?」

「だって、せっかくうさぎちゃんと知り合えたのにさ、もう帰るのかーって」

「そうだよね。こんな不思議な縁で知り合ったのに……あ、連絡先でも交換しとこっか?」

そらくんが今ケータイを持っていないと言うので、私は手帳を部屋に取りに行った。

後ろのページを破り、自分のケータイ番号を走り書きして渡す。

そらくんは、それを「サンキュー」と受け取ってから、

「じゃあ、またね」

と言いながらドアノブを捻った。

そして、開け放ったドアから外に出ようとして、

「…………って、出れないし!」

そらくんの体は、クローゼットの時と同じように、目に見えない何かに弾かれてしまった。

「ほんとに!なんで?!」

「わかんねー。うさぎちゃんは?」

そらくんに代わって、私も試みる。

「私は出れるみたい。もっかいやってみて」

「うん…………やっぱダメだわー」

「うーん、なんでだろ」

「なんでだろうねえ」