彼の説明はこうだ。

寝てたら大きな地震起きて、びっくりして家から飛び出ようとしたんだよね。

俺、地震苦手だからさー。

でも玄関開けたら、外じゃなくて、知らない部屋に繋がってたんだよ。

半分くらい夢かなとか思って、興味本意で入ってみたら、なんか戻れなくなりました。

「……へえ、そうなんだ」

順応性が高いのか、それとも、考えるのをすっかり諦めたのか。

今日のお昼はラーメン食べたんだよね、くらいの軽いノリで、彼は説明してくれた。

この状況は相変わらず全然理解できてないけど、実際、私の部屋と彼の家の玄関は繋がっていて、彼が目の前にいる。

私も現実として受け入れるしかない。

理解を超えることは、考えても仕方ない。


この不可思議な事態を一旦受け入れてみたら、彼に対する警戒心は、もうすっかり消えた。

むしろ、この珍事に一緒に巻き込まれた仲間、という感じ。

とりあえず寒いから、こたつに入ってお茶を飲みながら、この状況についての情報共有を始めた所だ。

あの、ニュースにもならなかった地震のことが話に出たから、もしかしたら、あれが原因で空間が歪んで……とか一瞬思った。

でも、SFなんて全く詳しくないから、結局考えるのをやめた。

「それでさ、俺きみに……ってあれ?名前」

「名前?」

「俺、そら。きみは?」

「えっと、私、うさぎ」

「うさぎちゃん?可愛い名前」

「ありがと」

「不思議な縁だけどよろしくね、うさぎちゃん」

彼─そらくんは、人懐っこく笑った。