何度見ても、全く知らない人。

……私と同い年くらい?

ダボッとしたスウェット姿で、柔らかそうなミルクティ色の髪は、寝癖でぴょんぴょん跳ねてる。

……あれ?

ちゃんとした格好したら、この人、かなりかっこいいんじゃない?

よく見たら、顔、結構イケメンだし……。

って、観察してる場合じゃない!

全くの他人が、いつの間にか家にいるのだ。

そんなの怖すぎる。

本当に誰?!

なんでうちにいるの?!

「こ、こ……ここ私の家…………そ、それより!あ、あなた、どこから入ったの?!」

恐る恐る質問すれば、彼はちょっと首をかしげて、

「うーん……あそこ?」

クローゼットを指差した。

「ええっ?!ま、まままさかずっとあそこにいたのっ?!!!」

「いやいやいや!そんなわけないでしょ」

「…………けけ、警察、警察呼ば」

「ちょっ、ちょっと待ってー!まじで待って!」

彼は必死な顔をして、私の言葉を遮った。

「いやまじでさ!クローゼットの中、見てよ!」

そう言うと、彼はすたすたとクローゼットに近づき、そして開け放った。

「ほら。俺の近くに来るの怖いなら、遠くからでいいから見てよ」

私は彼の言葉に従って、少し遠巻きにクローゼットの中を覗いた。

「えええっっっっ!!!!」

普段、私のコートやらセーターやらがたくさん掛かってるはずのそこには、見知らぬ家の玄関という、謎の光景が広がっていた。

「な、なに?ここ…………」

「俺んちの玄関」

「……何が起きてるの?」

「わかんねー。しかも戻れないんだよね」

彼はそう言って、クローゼットの中の空間に、手を伸ばしてみせた。

すると、遮るものなんて何もないのに、目に見えない何かが、彼の手を弾いて侵入を拒んだ。

「…………ダメ、全然理解できない」

「うん、俺も~」

こんな、理解不能過ぎて頭がショートしそうな状況なのに、目の前の彼は、なぜかちょっと楽しそうに笑った。