───ガタガタ、ガタガタッ


不意に大きな物音がして、ぱっと目を開けた。

そして、部屋が揺れていることに気づく。

どうやら、強めの地震のようだ。

物音は、食器棚が揺れている音だった。

私はこたつの中に頭まですっぽり潜り込んで、地震が収まるのをじっと待った。

10年ほど前の大きな地震以来、強い揺れが来ると、どうしても反射的に身を守ってしまう。

あの当時はまだ小学生で、真っ昼間の教室で机の下に潜って、死ぬんじゃないかという恐怖で震えていた。

揺れが収まって、私はこたつから顔を出す。

そろそろつけっぱなしのテレビから、臨時ニュースの通知音がするはずだ。

けれど、いくら待ってもその音はしなかった。

不思議に思って身を起こし、チャンネルをいくつも変えてみたけれど、どの番組でも地震のことなんて1つも触れない。

そういえば、ケータイの緊急通報アラームも、鳴らなかった気がする。

あの音凄まじいから、部屋が揺れる前に、絶対目が覚めるはず。

なんだろう、変なの。

もしかして寝ぼけてたのかな……。

ついさっきまで確かに揺れていたけど、地震のニュースがないんだから仕方ない。

結局、地震なんかなくてあれは夢だったのだと無理矢理思うことにした。

理解を超えることは考えない主義なのだ。

だって、そう思ってる今だって、本当に現実だって言い切れる?

まだ夢の中かもしれない。

いや、たぶん起きてるけど。